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もうひとつのサンタランド!〜夜空に輝く夢花火〜その1

2017年12月18日

ミュージカル「サンタランド!〜夜空に輝く夢花火〜」のスピンオフストーリーが小説になりました。

 


 あの日、一人ぼっちになった私を救ってくれたのは、あの日、ケガをして一人ぼっちになっていたオレンジの猫だった。


ミカンみたい。

その第一印象の通り、その猫にミカンと名付けた。ビクビクと震えるその身体を抱きしめる私の身体もまた、震えているのがわかった。

ジージの花火工場と、その隣にあった私たちの家はまるで夢の終わりを告げるかのように火事で無残に焼け焦げた。焼け跡から見つかったのは、お父さんとお母さん、そして花火工場にいたジージだった。

私のせいだ。
すぐにそう思った。
ジージは私と喧嘩したあと、また花火を作りはじめた。こんなことなら喧嘩なんてしなければよかった。

その前の年にバーバが亡くなってから、ジージの元気がなくなっていることには気づいていた。だけど、元気がないはずなのに私の前では妙に見栄を張って明るく振舞おうとするジージが、なんだか嫌だった。
本音で話していないようで、嘘で塗り固められた上部だけの作り物のようで、嫌だった。
どうして本当のことを言わんないんだろう。それが、この一年、ジージに対して思っていた気持ちだった。


だからこそ学校の人たちに、ジージとサンタが友達だと言ったことを嘘だと言われた時は悔しかった。

ジージ、また嘘ついたの?そんな気持ちだった。
サンタがいない、そんなことよりも、ジージが嘘つきだとバカにされたみたいで悔しかった。
ジージなんか大嫌い。そう思った。ジージのせいでみんなにいじめられた。そう思った。 そしてその日、ジージは亡くなったのだ。
それから何日間か、私の記憶はない。気がついたら叔母さんのお家にいた。
叔母さんはお父さんの妹で、近所に住んでいた。
火事が起きて一番に駆けつけてくれて、一番に私を抱きしめてくれたらしい。
叔母さんには家族はいなかった。前に旦那さんがいたらしいけど、私は会ったことがなかった。
離婚をして、実家のある街に戻ってきたのだ。
叔母さんは一人ぼっちになった私にとにかく優しくしてくれた。

カルーアミルクが大好きで、いつも酔っ払いながらたわいもない話をしていた。
お酒の飲めない私も叔母さんの晩酌にいつも牛乳を飲みながら付き合っていた。
私は何も語らない。ただ叔母さんの話を聞いていた。恋の話。夢の話…。

まだまだ幼い私に、叔母さんはまるで友達感覚で話していた。
酔っ払うと一人称をアタイと言い出す姿に可愛らしさを感じ、
シラフの私に、気分で酔いなさい、という姿に無邪気さも感じた。私は叔母さんが大好きだった。



叔母さんはオレンジ色のその猫を飼いたいと言った私の言葉も否定することなく受け入れてくれた。
もしもあの時叔母さんが嫌だと言ったら、私は一人ぼっちのままだったかもしれない。 叔母さんのお陰で小学校時代の私は学校でこそ孤独だったけど、まだ楽しく過ごすことができた。 だけど、中学へ入ると、叔母さんは私の距離は次第に離れていった。





    中学に入ってから、初めて好きな人ができた。と言っても、私はその人と話したことはなかった。
小学校は別々で、中学になってから同じクラスになった。
まるでクラスのリーダーのように明るいその男の子は誰にでも優しく、友達のいない私に対しても笑顔で話しかけてくれた。ただ、私はそんな彼の優しさに対して、素直に受け入れる勇気がなかった。
臆病で根暗な私は明るく元気な彼と話すのは不釣り合いだと言い聞かせ、恋心が収まるのをただただ待ちわびた。
でも抑えようとすればするほど、彼の魅力が目に付いた。

私は彼への想いの全てをミカンに伝えた。

本当は叔母さんに伝えたかったけど、私が中学に入ってから、叔母さんは仕事が忙しくなり始めたみたいで、たびたび出張で家を空けることもしばしば起き始めていた。
寂しかったけど、この時期は彼のお陰で学校が楽しかったのでミカンにそれを報告できるだけで満足だった。


ミカンは何も返事はしてくれないけど、私の言葉を否定もせず、ただただ聞いてくれていた。
一番興奮してミカンに話した彼のエピソードは学校行事のスキー遠足で雪山に行ったときの話だ。
スキーを持っていなかった私は仮病を使ってみんながスキーをしてるのを見学していた。
その時、彼も脚を怪我していてスキー授業に参加していなかった。
私と彼だけが暖かいロッジでみんながスキーを滑っているのを見ていたのだ。

私は緊張して何も話せなかったけど、暇つぶしなのか優しさなのか、彼は積極的に私に話しかけてくれた。
そしてそのうちに彼は私にある提案をした。

「みんなが滑ってるのを見てたら俺もやりたくなってきた。一緒に滑らない?」

そう言って彼は、ロッジの隅に置いてあるボロそうなソリを指差すと、驚いてあわあわしてる私の手を引っ張って、リフト乗り場に連れていった。
リフトに乗る中、私の心臓はずっとバクバクしていた。
どうしてこうなったのかさっぱりわからない。どうして私だったのかもさっぱりわからない。
私でいいの?私は頭が真っ白のまま、雪山の頂上にいた。

もうすっかり夕焼けの空だった。そこからの景色は格別に綺麗だった記憶がある。
彼はソリに乗り込むと、私を自分の後ろに座るように指示した。 「いいか、絶対離すなよ」 そう言うと、ソリは一気に雪山を滑降しはじめた。 たぶん時間にして1分くらいだ。 だけどその1分は私にとって本当に幸せな時間だった。
空に浮かぶ一番星が私と彼を優しく見守ってくれているようだった。
家に帰って真っ先にそのことをミカンに報告した。
もちろん、先生に初めて怒られたことも話した。それも含めて、私の中学時代の一番の幸せエピソードだった。



だけど、そんなミカンへの相談も、中学一年の一年間だけで終わってしまった。
彼は転校してしまったのだ。 カラーだった学校生活が急にモノクロに変わった気がした。 私はまた一人ぼっちになってしまった。


(つづく)

 


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